楽隊諸行無常



   オーボエ奏者のAの声 諸行無常の響きあり
    年寄奏者の音の色 盛者必衰の理をあらはす
     おごれる指揮者も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
      たけきオケもついには滅びぬ ひとえに風の前の塵に同じ

アマオケに常に変わらないものなんてない。 世は移り、人は変わり、音程も変わって行く。
演奏前のチューニングでの安定しないAの音は、諸行無常を意味する。 かつて腕を鳴らした金管奏者の音色さえ、寄る年波に勝てるものではない。 指揮者は変わり、やがてオケも栄枯盛衰を繰り返す。
そんな楽隊に変わらずに流れるのは、 奏者の持つ音楽への情熱だけなのだろうか。

ここは疲れた楽隊奏者の歌をつづったページです。



 

古典の歌

 

あしひきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし音をひとり吹きなん

(心) どこでブレスしろっていうんだろうか。おまけに一人でソロ状態じゃないか。 うう、苦しくなってきた。音が震える。。
(本歌) あしひきの山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む
柿本人麿呂

あわせての 後の心にくらぶれば むかしは曲をさらはざりけり

(心) パート譜を見た時は簡単だと思っていたんだけどなあ。 合奏してみたらとんでもなく難しかった。 こんなことならもっと練習しておけばよかったなあ。
(本歌) あひみてののちの心にくらぶれば むかしはものを思はざりけり
(中納言敦忠)
音程はうつりにけりないたづらに わが耳疑う響狭さに
(心) 自分の下手さに苦しむホルン奏者の読める

(本歌) 花の色はうつりにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
小野小町
ひさかたの光のどけきはるの日に しづこころなく音の落ちらむ

(心) 久しぶりに練習に出てきたらついていけなかった時の心情を読む
(本歌) ひさかたの光のどけきはるの日に しづこころなく花の散るらむ
紀友則
今来むといひしばかりになが月の 楽章の出番を待ち出でつるかな

(心) タチェットがあるTrb,Tp奏者が練習の間に読める歌
(本歌) 今来むといひしばかりになが月の わりあけの月を待ち出でつるかな
素性法師
世の中にたえて指揮者のなかりせば オケの心はのどけからまし

(心) 解説不要。(Y.K@米国さんより寄せられました。)
(本歌) 世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
在原業平
 

近代〜現代の歌

 

さらえども さらえども 猶わがパート 弾き(吹き)きれず ぢっと手を見る

(心) 解説不要
(本歌) はたらけど
はたらけど 猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢっと手を見る
石川啄木
あなたが難しいねと言ったから 今日は別の曲をさらう

(心) 楽器ケースを開けたものの、演奏会用の難しい曲をさらうのも疲れたなあ。 楽しい協奏曲でもさらおうか。
(本歌) 俵万智 風


   楽隊の調べは絶え(耐え)ずして しかも元の音程にあらず
    響に浮かぶ歌方は かつ消え かつ結びて 
     久しくとどまりたる例なし
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